名古屋から30分、愛知県岡崎市にあるZOLLANVARI GABBEH(ゾランヴァリギャッベ)専門店。店頭に常時500点以上の商品をご用意しています。

2020/09/20

絨毯関連書籍の紹介④‐1

 皆様こんにちは。ギャッベアートギャラリーの高橋です。各地での展示会が続き、なかなか更新が出来なかったため久しぶりの更新となります。これまでの8ヶ月間、色々な会場で様々なお客様と楽しくお話をすることが出来ました。本当にありがとうございます。

 さて今回も私が以前に呼んだことのある本を紹介したいと思います。ただ本をひたすらに紹介するだけではつまらないので、まずはこちらのギャッベをご覧下さい(図①)。

 

ルリバフファイン・大型ルームサイズ・カラフル・ミフラブ、ザクロ・真上画

図① ルリバフファイン・257×175・ザクロ、ミフラーブ様式

 今年の7月のイラン仕入れで入ってきたばかりのこのギャッベ、糸の細さはルリバフファインというもので大変細かな織りが特徴の当店自慢の一枚です。細かい糸を使っているからこそできるらかな曲線や細かな文様の表現は本当に見事です。それから写真では伝わりにくいのですが手触りもすごく特徴的なので見て触って楽しんでいただきたいギャッベです。現在展示会に持ち歩いているので気になられた方は是非展示会までお越しになられてください。

 こちらのギャッベでまず目に付くのは中央にある柘榴や糸杉の木かと思いますが、ボーダーの内部を見ていただきますと、その下部には二本の柱のようなものが立っており、上部はアーチのような、例えるならパリの凱旋門のような形になっていますね。この様式はミフラブ(محراب‎ mihrāb)様式と呼ばれ、ギャッベはもとより多くのペルシャ絨毯にも使用されてきたイランの伝統的なスタイルであるといえます。もともとはこのミフラブというのはイランの宗教施設、日本で言うお寺に近いかもしれません、モスクという建物の内部にある壁のくぼみのことを意味し、それがいつしか絨毯のデザインとして使われるようになりました。今回はモスク、そしてそれに用いられてきた要素がどのように絨毯のデザインに関係しているのかについてお話していけたらなと思います。

ということで今回取り上げる本はこちら、羽田 正著『モスクが語るイスラム史 建築と政治権力』(図②)。

 

図② 羽田 正 著 『モスクが語るイスラム史 建築と政治権力』 1994年 中公新書

 7世紀に誕生し今日まで続いているイスラーム世界においてモスクはムスリムたちの生活と密接なかかわりを持っており、イスラーム社会の変化を映し出す鏡であると著者は語っています。この本では世界各地にあるモスクをその時代によって、古典型モスクの時代、多様性の時代、光輝の時代と三つの区分に分けて紹介しています。またこの本のタイトルにもあるように本来モスクは宗教施設という事もあり政教一致のイスラーム社会の中で当然政治との結びつきも見られるようになったのですが、今回はモスクとは、ミフラブとは、そして絨毯とのつながりについて中心にお話しして聞けたらなと思います。興味のある方は是非お読みになられてください。文庫本で大変読みやすい本です。

 まずモスクという言葉でずがそもそもはアラビア語のマスジド(masjid)が語源になった言葉で、本来マスジドとは「平伏する場」を意味します。皆様もテレビなどで床に座ってお祈りする人々を見られたことがあるかも知れません。イスラームを信仰する人々、ムスリムは一日に5回の礼拝が義務付けられており、それを行う場所すなわち神に向かってお祈りをする場所がマスジド、モスクという建物の最たる役割です(写真③)。

 

図③ モスクで礼拝をする男性 羽田、1994、p10より引用                   礼拝はムスリムがしなくてはならない義務、「五行」の一つでもある。他には信仰告白、喜捨、巡礼、断食がある。一日五回と聞くと大変に思えるかもしれないが、礼拝が出来ない場合はまとめて行ったり、時間をずらしてもよいなど実はそれなりに融通が利く。

 イスラーム圏全域にモスクを見ることが出来ますが、その様式は地域ごとによって様々です。先ほども申し上げたとおり、モスクとはお祈りの場所として立てられたものであり、外見や構造について厳格な規定があるわけではありません。ただイスラームにおいて宗派によっても異なりますが、礼拝は集団で行ったほうがよいという考えがあるらしく、大人数を収容できるような大きな、そして豪華に装飾されたモスクがいくつか作られるようになりました(写真④)。

図④ イマーム・モスク 羽田、1994より引用                   イスラーム世界のモスクの中でも最も美しいとされるものの一つ。イランにおけるペルシャ絨毯最大の産地であるイスファハーンにあり、同地域の絨毯のデザインにも大きな影響を及ぼしたとされる。

 規模も構造もバリエーションに富むモスクですが、お祈りを行う場としての機能を果たすためにこれだけはモスクに必ず付随しているというものがいくつかあります。その中のひとつがミフラブです。モスク内部にはほぼ100%壁に窪みが存在しています。なぜ壁に窪みがあるかというと、これはイスラーム第一の聖地であるメッカの方角を示したものです。イスラームは偶像崇拝を禁止しているため、宗教施設であるモスクにおいても何か特別な像に向かって拝むということはせず、聖地であるメッカの方向を示したミフラブに向かってお祈りをします。ミフラブの形や大きさはモスクによって様々ですが、基本的には左右の柱で上部のアーチを支えるという様式をとっています(写真⑤)。

図⑤ コルドバの大モスクのミフラーブ 羽田、1994より引用      このようにミフラブ周辺は綺麗に装飾されることが多い。ただしその装飾に人物・動物が描かれることはほとんどなく、代わりにつる草などの植物表現、また神の言葉を記したクルアーンの言葉、文字装飾などがされることが多い。

 やはり特別なものという認識がムスリムたちの中でもあるらしく、多くのモスクでこのミフラブ周辺がモザイクやタイル等で美しく装飾されています。後は礼拝の際に説教を行う階段であるミンバル、礼拝の呼びかけをするための塔であるミナレット、礼拝の前に体を清めるための水場などはほぼ必ずモスクに付随しているといえます。また水場がある理由にも関連しますが、礼拝は清潔な体、場所で行うようクルアーンに示されているため、モスク内は絨毯が敷き詰められていることが多いです。またモスクの機能は第一に礼拝の場であると先ほどお話いたしましたが、それだけではなく他には様々な機能があります。例えば宗教活動の場として使われることもありますし、政治活動の場として活用されるときもあります。ただ私がモスクに言って一番驚いたことは、ただ何もせずぼーっとしている人や日陰でねっころがっている人、楽しげにおしゃべりをしている人など礼拝以外のことをしている人がかなりいたということです。モスクは憩いの場としても使用されており、ムスリムたちにとっては生活になくてはならないものであるようです。

 さてここまでモスクとミフラブについて大雑把に概略を説明してきましたが、少し長くなりましたので今回はここまでにしたいと思います。モスクと絨毯の様式・デザインの関係性については次回の記事でお話していきたいと思います。それでは失礼致します。

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